キャリアアップしやすい環境か

キャリアアップという目標があれば、仕事はさらにやりがいがあるものとなり、楽しく感じられるでしょう。介護職でもさまざまな教育・実習を受けることができるところはあります。このように、キャリアアップに取り組んでいる企業に勤めることで、自身のレベルアップをすることができるでしょう。

介護士に対する教育では、初任者研修・実務者研修・介護福祉士があります。こちらでは、そんな介護士のキャリアアップの流れを紹介していきます。

もくじ

介護の教育・研修の状況

介護の仕事は身体介護と生活援助がメインですが、介護士のスタートラインの証明書となるのが、介護職員初任者研修です。基礎的な知識や技術も学ぶことができ、後には介護福祉士や認定介護福祉士の資格を目指すこともできます。

修了のメリットは、給料のアップと信頼性の向上です。保持することによって自分自身も自信がつきますし、どのように介護をしていけば良いかがわかります。資格手当がつく職場もあるので、給料アップも期待できるでしょう。

介護職員初任者研修を修了していれば、訪問介護が可能になります。そして、実務研修を受けることで、さらに知識や技術を習得できる、介護福祉士の資格を目指すことができます。これからは、さらに高齢化が進むと言われている日本。介護職の求人は多くありますが、資格を持っていることによって、さらに就職しやすく求められやすくなるでしょう。活躍できる場所がぐっと増えることになるでしょう。

介護初任者研修とは

介護初任者研修とは、介護に関する資格や証明書のなかでも取りやすいと言われています。

130時間の講習を受け、試験を受けるのが取得の流れ。通常2~3ヶ月ほどで取れると言われていますが、試験もあるので基礎の勉強が大切になってきます。

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介護実務者研修とは

介護実務者研修とは、介護初任者研修よりもひとつ上をいく証明書。また、この証明書が取れないと、介護福祉士の受験資格を手に入れることもできません。介護福祉士を目指すには、避けて通れない道です。

介護初任者研修よりも高い介護の知識や技術を身に着けられるようなカリキュラムが組まれており、研修時間も450時間と大幅にアップ(介護初任者研修の130時間を含む)。

また、法の改正によりできたこの介護実務者研修は、いままでよりも医療と介護を近づかせました。医療的なケアもカリキュラムに取り込まれています。この資格を持っていると知識や技術を持ち、自信もつきますし、介護福祉士へのキャリアアップの道を目指すこともできます。

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介護福祉士とは

介護福祉士は国家資格で、それだけ重宝されやすく待遇も良い資格です。介護福祉士の資格の有無で、給与にも差が出てきます。

また、仕事のできる範囲も広がりますし、やりがいにも繋がるでしょう。介護福祉士を目指すには、施設で働きながら取る方法、福祉を勉強できる高校を卒業して目指す方法、介護福祉士の養成施設を卒業して取得する方法があります。

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介護職の一般的なキャリアパス

専門能力を高めて、現在よりも高い経歴・職位等を得ることをキャリアアップと言います。そして、キャリアアップのための具体的な道筋のことをキャリアパスと言います。 以下、介護職におけるキャリアパスについて一般的な例をご紹介します。

1.介護初任者研修・実務者研修を受講する

介護職を目指すうえで、最初に目指す資格が介護初任者研修・実務者研修です。どちらを受講しても構いませんが、通常は介護初任者研修を受け、その後、ある程度の実務経験を経てから実務者研修を受ける形となります。

2.訪問介護事業のサービス提供責任者を目指す

訪問介護に従事している方の場合、介護士としての実務経験が3年を超えたあたりで、介護サービスの責任者を目指しましょう。一般に「サ責」と呼ばれる役職のことで、他のヘルパーを取りまとめる仕事を行います。

3.生活相談員を目指す

生活相談員とは、介護施設への入所や日常生活について、総合的に相談を受ける役職のこと。被介護者やそのご家族、介護スタッフ、ケアマネージャー、看護師等と連携を取りながら立ち回る仲介役の仕事です。

4.ケアマネージャーを目指す

ケアマネージャーとは、被介護者のケアプランを作成する責任者のこと。作成したプランにしたがい、介護者や介護施設、被介護者、ご家族等の間に対して各種の相談・指導等を行う立場の資格となります。

5.訪問介護事業者の事業所長を目指す

訪問介護に従事している方が目指したい上位の役職が、事業所長です。自身が所属する事業所の所長を目指すことは難しいかも知れませんが、実力があると判断されれば、新規事業所の立ち上げに伴って所長に就任できる可能性があります。

6.施設の介護長・施設長を目指す

介護施設に従事している方の場合、介護スタッフから介護長、施設長というキャリアパスを目指したいところ。介護長とは、施設内の介護スタッフの取りまとめ役で、施設長はその施設の最高責任者です。在職20年を過ぎたころに施設長レベルになることが理想的。

7.看護師を目指す

昨今、介護職の方々の間で、看護師の資格を目指す方が増えてきました。通学が必要となるため、いったん退職を余儀なくされるかも知れません。しかしながら、たとえ数年間のブランクを経たとしても、看護師の資格を持って介護業界へ復職した場合、大きなキャリアアップとなることは間違いありません。

8.理学療法士・作業療法士を目指す

看護師と同様に、理学療法士や作業療法士などのリハビリ職を目指す介護職の人もいます。こちらも数年間の休職等が余儀なくされる可能性がありますが、看護師と同様、間違いなくキャリアアップにつながります。

9.事業所設立を目指す

経験とノウハウに自信があり、かつある程度の資金調達のメドが立つならば、自分で訪問介護事業所等を立ち上げるという道もあります。介護に対する強い理念・信念をお持ちの方は、独立も一つの選択肢となることでしょう。

キャリアアップに関する
元気村グループ(翔裕園)の取り組み

研修の充実で有名な社会福祉法人元気村グループ。その理事長を務める神成裕介氏に、キャリアアップに関する元気村グループの取り組みを聞いてみました。

サイト監修社会福祉法人
元気村グループ(翔裕園)
内部の研修だけでなく資格取得のサポートも
神成裕介
神成裕介
(理事長)

人が財産という考えのもと、元気村では研修を充実させています。たとえば、新入職員向けや3年目の方向け、指導職研修など、幅広く展開しています。
そうした内部研修のみならず、著名な講師による講義が行なわれる高齢者介護研究発表会、次世代リーダー育成のための元気塾を開催。グループの教育機関である関東福祉専門学校で、介護福祉士の国家試験対策などの講座を開講もしており、資格所得のサポートも行なっています。 元気村グループ(翔裕園)について
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元気村グループ(翔裕園)のキャリアアップ
についての職員の声

キャリアに応じた研修で必要な知識が身に着く

キャリアアップしやすいと思います。入職時・入職後3か月・半年・総合職・指導職・管理職と、それぞれのキャリアに応じた研修で必要な知識を身に着けられます。また、キャリアアップ研修で介護の知識や技術を学ぶこともできるので。

キャリアアップするためのポイント

本当の意味での介護のプロになるにあたり、実現すべき課題は多々あります。それらの中でも特に重要な課題が、以下の5点でしょう。介護に限らず、すべての組織においてプロになるための基本です。ここで十分に理解をし、本当の意味での介護のプロを目指していきましょう。

施設の「理念」「行動指針」を理解する

いかなる組織であれ、その組織には目標を置くべきです。この目標のことを、一般には「理念」「行動指針」などと言います。

新人のうちは、この「理念」「行動指針」を単なるお題目にしか感じられないかも知れませんが、プロになる過程において、これらがいかに重要であるかを理解できるようになります。

逆に、いつまでも「理念」「行動指針」の重要性を理解できない人は、厳しい言い方をしますが、いつまでも本当の意味でのプロにはなれない、ということです。

なぜ「理念」「行動指針」が大切なのか

介護現場には、さまざまな考え方や経験を持った職員が集まっています。だからこそ、それぞれの職員が自分の考えや経験だけに基づいて行動してしまっては、組織がまとまりません。

もちろん、自分の考えや経験を大切にして介護することは、大事な発想です。それとともに、職員は組織自体の考え方もよく理解しておかなければならなりません。

組織が何を目指しているのかを理解しなければ、「施設長はあの職員ばかりに贔屓している」「私ばかりに面倒な仕事が回ってくる」「給料で差別されている」などという発想が生まれます。これら発想が職員の間に蔓延すれば、職員それぞれは自分本位の介護をやることになり、やがて施設は解散に向かうことでしょう。

だからこそ、組織には「理念」「行動指針」が必要となります。いかに自分が良かれと思って取った行動でも、その行動が「理念」「行動指針」に反したものであれば、施設からペナルティを受けることになります。「理念」「行動指針」に反した行動は、組織を崩壊に導きかねないからです。

施設が解散してしまっては、地域の利用者の方々に介護サービスを提供すること自体ができません。

「理念」「行動指針」とどう向き合うべきか

新人は、いったん自分の考え方を真っ白にし、施設の「理念」「行動指針」を十分に理解してください。何度も「理念」「行動指針」を意識した介護をすることで、頭から体へと浸透させていきましょう。

また、入所面接の際に「理念」「行動計画」が不明瞭な施設であると分かった場合は、たとえ内定をもらったとしても、入所を丁重にお断りしたほうが良いかも知れません。なぜなら、その施設はやがて崩壊する可能性があるからです。

一方で、すでにリーダーとなっている人は、当然ながら施設の「理念」「行動指針」がよく体に浸透しているはずです。この「理念」「行動指針」を新人に浸透させるため、チームの課題の把握、課題克服のための計画立案、計画の実行、部下への評価などを行ってください。「理念」「行動指針」の実現に向け、計画的なプロセスを踏んでチームを正しい方向へ導きましょう。

給料をもらうことの意味を理解する

日本は成熟した資本主義社会です。資本主義社会において手にする給料の金額は、その人が世の中にどれだけ役に立っているか、ということの裏返しに過ぎません。業界によってさまざまな制度上の壁はありますが、まずは、この資本主義社会の原理原則を理解することが大切です。

もう少し具体的に言えば、給料の金額は、その人が上げた「結果」と、その人に対する「期待」に対して支払われるもの。一般職員の給料よりも施設長の給料のほうが高い理由は、ほかでもない、施設長のほうが世の中に「結果」をもたらしているからであり、施設長のほうが世の中から「期待」されているからです。

「本来はそうだけど、ウチの施設長は全然ダメだよ」と思う人もいるかも知れませんが、その発想自体が誤りです。たとえ事実がそうであったとしても、その発想を持った職員には成長がありません。

結果と期待。これらの現実と向き合わない限り、いつまでも「給料が安い」「給料が上がらない」という不平を言い続けることになるでしょう。

何が「結果」や「期待」をもたらすのか

介護職として具体的な「結果」をもたらす行動・考え方は、主に以下の3点です。

勤続年数

どんな仕事であれ、新人よりも長く仕事を経験している人のほうが、通常は仕事ができます。同じ時間の中でも、クオリティの高い仕事を数多くこなすことができることでしょう。

それがすなわち、利用者から満足されるという「結果」へとつながります。常に一定の「結果」をもたらす人材は、上司から「期待」されることにもなるでしょう。かなり大雑把な言い方になりますが、傾向としては、勤続年数と給与の額は比例します。

資格取得

資格を取ることが、そのまま仕事のクオリティに直結するとは限りません。しかしながら、資格を取るために一生懸命勉強をする人は、一般に向上心があります。その向上心こそ、リーダーや施設長には「期待」として映ることでしょう。

「期待」される人は、上司から「まだ早いかな?」と思われながらも、あえて責任のある仕事を与えられることがあります。これをビジネスの世界では「期待人事」と言います。

多くの場合、人は実力よりも上の仕事・役職を与えられると、急速に成長するものです。その時こそ、資格名(介護福祉士など)に見合った本当の実力が身についているはずです。実力が身につけば、当然「結果」も生まれ、さらなる「期待」へとつながります。

勤務態度

先に、組織には「理念」「行動指針」がある、と説明しました。この「理念」や「行動指針」に反した勤務態度を取っている職員は、組織崩壊を導くリスク要因となります。このようなリスク要因となる人材のことを、ビジネスの世界では「マーベラス」と言うことがあります。「マーベラス」は、組織に「結果」をもたらすこともなければ、組織から「期待」されることもありません。

遅刻をしないこと、やむを得ない場合を除いて欠勤しないこと、出勤・退勤時は大きな声であいさつをすること、常に身の周りの整理整頓をすること、率先して電話を取ること、キツい言い方をしないこと。これらを実行するだけでも、組織で「マーベラス」になることはありません。

介護過程の中で仮説と検証を繰り返す

介護には「これが正解」という結論がありません。あえて介護に正解を求めるならば、「利用者主体で仮説と検証を繰り返すこと」としか言いようがないでしょう。

もちろん、仮説と検証を繰り返す中でも、永遠に正解にたどりつくことはありません。常に自分の取った行動に対し、「これで良かったのだろうか?」と、介護者は疑問を持ち続けることになります。

しかしながら、この疑問を持ち続けることこそ、介護のプロになるための一つの要件。疑問を捨てた瞬間に、利用者主体の介護ではなくなるからです。

仮説と検証を怠った場合

介護過程の中で仮説と検証を怠った場合、デメリットを被るのは利用者です。

たとえば、利用者の体の調子が毎日同じとは限りません。よって、いつもと様子の違う利用者の表情を見たとき、職員は「●●さん、今日は少し体調が悪いかな?」と仮説を立てる必要があります。この仮説がなければ、転倒などの思わぬ事故を招く恐れがあるからです。

あるいは、理由は分からずとも、なぜか利用者の機嫌が悪い日もあります。そのようなとき「今日は機嫌が悪いかな?」と仮説を立てて行動しなければ、入浴を拒まれたり、意思決定支援がうまくいかなかったりするかも知れません。

仮説抜きの介護でデメリットを被るのは、常に利用者です。質の高い介護を提供するためには、常に仮説に基づいた行動をし、その結果を検証するというサイクルが介護職員に求められます。

介護職は知的労働

介護過程の基本として「アセスメント→計画の立案→実施→評価」というプロセスがあることは、介護職員であればご存知でしょう。これらの基本を軽視している人もいるかも知れませんが、これを実践するかしないかで、介護の質は大きく変わってきます。言い換えれば、これらを実践するかしないかで、利用者の満足度が大きく変わる、ということです。

上記の介護過程を日常的な支援の場に照らして言えば、「観察・声がけ→仮説→仮説に基づいた介護→観察・声がけ」ということになるでしょう。これらのプロセスは、介護現場でさりげなく行われていることなので、周囲から見れば、専門性の高い行動には見えないかも知れません。

しかしながら、このプロセスは常に知的思考の中で行われるもの。介護とは、常に観察・思考・観察を繰り返している高度な知的労働なのです。

教科書にある基本が介護のベース

「世の中は教科書通りには行かない」「実社会で教科書は役に立たない」という人がいます。介護現場においても、新人が教科書通りの介護をしようとした際、「そのやり方ではダメだ」「ウチにはウチのやり方がある」などと、教科書を否定するような先輩もいます。

彼ら彼女らの言っていることは、決して間違いではありません。しかしながら、やはり介護のベースは教科書にあることを理解しておくべきでしょう。

「教科書+応用」が介護の本質

教科書と聞くと、毛嫌いしてしまう人もいるかも知れません。しかし教科書とは、世界中の何千万人、何億人という被介護者の観察から生まれた普遍的な知識・技術です。どんな利用者にとっても共通して大事なことが、教科書の中には凝縮されています。これを飛び越えて応用編のみを実践しても、利用者の満足度は上がらないでしょう。

もちろん、介護現場にはさまざまなタイプの利用者がいます。身体状況も性格も、それぞれ全く異なります。それら利用者全員に対し教科書通りの介護を行うべき、と言っているのではありません。教科書のベースを押さえたうえで、利用者に応じた応用編を実践しましょう、という意味です。

先輩が「そのやり方ではダメだ」「ウチの施設にはウチの施設のやり方がある」と言っているのは、応用編の部分のみを切り取ったアドバイスに過ぎません。新人は、その言葉を真に受けて応用編のみを追求しないよう注意しましょう。

また、介護現場の先輩においても、新人に対しては、教科書の基本を押さえた上での応用編を指導すべきです。

教科書を忘れたプロは良い介護をできない

何かにつかまる力があり、かつ足で踏ん張ることができるにも関わらず、前かがみになることができないために立てない利用者がいたとします。ご存知のとおり、たとえどんなに腕力や脚力があろうとも、多くの利用者は前かがみにならなければ立つことができません。

改めて教科書の基本に戻りますが、利用者が立つためには、①浅く座る、②足をやや開く、③足を引く、④前かがみになる、という一連のプロセスが必要です。これらプロセスの中で、たとえば「④前かがみになる」をできない利用者に対しては、前かがみになるための支援を行う必要があります。前かがみになるための支援方法は、教科書に記載されている基本です。あなたは、この基本をすぐに思い出せるでしょうか?

基本を思い出せなければ、この利用者は永遠に立ち上がることができないかも知れません。

その行動は『支配』になっていませんか?

介護施設は、刑務所ではありません。刑務所には自由がなく自己決定権もありませんが、介護施設には自由も自己決定権もあります。言わば、刑務所は「支配される場所」であるのに対し、介護施設は「支援される場所」です。

しかしながら、介護職員の考え方や言動次第で、介護施設は「支配される場所」にも変わります。支配しているつもりがなくても、結果として支配している形になることがあるので注意してください。

言葉の選び方次第で「支援」が「支配」になる

「食事の時間なので食堂に行きませんか?」という言葉と、「食事の時間なので食堂に行きましょう」という言葉。利用者に対して同じ行動を促している言葉ですが、前者は「支援」となり、後者は「支配」となります。この違いが理解できるでしょうか?

「行きませんか?」という言い方に対し、利用者は「はい」「いいえ」という自己決定権を発動する余地があります。一方で「行きましょう」という言い方に対して、利用者には自己決定権がありません。ただ従うのみです。よって、前者は「支援」であり、後者は「支配」となります。

実にちょっとした言葉の違いなのですが、利用者にとっては、このちょっとした違いで、自由や人間性を奪われたような感覚になることを理解してください。食事以外でも、あらゆる場面で言葉使いが「支配」になっていないかを、介護職員はよく考える必要があります。

利用者のためにやった行動が「支配」になることもある

ベッドから転落する恐れがある利用者に対し、介護職員には2つの選択肢があります。1つめが「危ないので転落しないような対策をとろう」という選択肢、2つめが「なぜベッドから降りようとするのだろうか?」と考える選択肢です。

現実として、ベッドから転落しないための対策をとること(柵を増設する等)は、大切なことです。しかしながら、それら物理的な対策をとることは、すなわち利用者の「支配」につながっていることを、十分に理解しておいたほうが良いでしょう。

同じ対策をとるにしても、先に「なぜベッドから降りようとするのだろうか?」と考える姿勢が重要です。日ごろの介護に対し、何らかの不満が蓄積しているのかも知れません。家族の面会が少ないことから、家に帰りたがっているのかも知れません。あるいは、身体的な不調やせん妄などが背景にあるのかも知れません。理由が分かれば、物理的な対策を採らずとも問題が解決する可能性があります。

それでも問題が解決しないと想定される場合に限り、上司や家族、ケアマネージャー、医療関係者等と相談のうえ、何らかの具体的措置を検討すべきでしょう。

引用元:『おはよう21』中央法規出版,2018年5月

リーダーの役割と考え方

まだリーダーを経験したことのない人は、リーダーの仕事のイメージについて「部下に指示・命令を出して組織を回すこと」と捉えているかも知れません。しかし、この認識は誤りです。

確かに、一部には部下に指示・命令ばかりして組織を運営しているリーダーが存在します。しかし、そのように、部下の意思決定権を奪って命令ばかりするマネジメントを行っていると、やがてチームは崩壊することでしょう。

リーダーの仕事は、部下に指示・命令することではなく、部下が自ら正しい考え方・行動を取れるようになるよう、上手に導くことです。これは介護業界に限らず、どの業界にも共通する普遍的なリーダー論です。

人が他人をコントロールすることはできない

もしあなたの上司が、部下に指示・命令ばかりしているリーダーだったとした場合、あなたはどのような感覚を抱くでしょうか? 最初のうちは「上司の命令だから」と考え、素直に従うことでしょう。

しかし、徐々に仕事に慣れてくるにつれて、上司からの命令を窮屈に感じてくるはずです。やがて上司からの命令を「支配」「拘束」と感じるようになり、職員の意識の中には、上司に対する拒絶反応が生まれます。一人ひとりの職員にそのような意識が蔓延すれば、その組織はまとまりません。退職者も続出し、組織は崩壊へと向かうことでしょう。

そもそも、指示・命令を自分の仕事と信じているリーダーは、「人が他人をコントロールすることはできない」という基本原理を分かっていません。自分の指示や命令で、部下の意識や行動を変えることができる、と誤認しているのです。

リーダーが変えることができるのは、部下の意識・行動ではなく、自分の意識・行動だけです。部下の意識・行動を変えたいならば、まずはリーダー自身が自分を振り返り、自分を変えることが正しい順番です。リーダーの意識・行動が変われば、おのずと部下の意識・行動も変わっていくという原理を理解しておきましょう。

人は共通ルールには従う

新人のうちはリーダーの指示・命令に素直にしたがうものの、仕事に慣れてくるにつれて、徐々にリーダーの指示・命令を窮屈に感じるようになる、と説明しました。

たとえ自分のリーダーの指示であれ、その指示の内容が、リーダー自身の個人的価値観や経験だけを根拠にしたものならば、やがて人はこの指示にしたがわなくなっていきます。しかしながら、リーダーにはしたがわないものの、唯一、職員らが素直にしたがうものがあります。それが「組織の共通ルール」です。言い換えれば、上で説明した「理念」「行動指針」です。

人は、他人にはしたがわないものの、抽象的な理想像には素直にしたがう生き物。リーダーとして組織を運営していくためには、個人レベルでの指示・命令よりも、組織レベルでの「理念」が大事であることを、改めて認識してください。

職員の思いを引き出しながら組織の理念を作る

組織運営には「理念」が大切ですが、その「理念」がリーダーの個人的感覚や個人的経験に基づいて作られたものならば、意味がありません。「理念」は、チームを構成するメンバー全員で考えるものです。

将来、あなたが組織のリーダーになった暁には、最初にメンバー全員で「理念」のミーティングを開くべきでしょう。

しかしながら、いざミーティングを開いてみると、「メンバーから活発な意見が出ない」という事態に直面するリーダーもいるようです。この事態の背景にあるものは、リーダーの声の大きさかも知れません。

指示・命令を出すタイプのリーダーを前にして、部下は意見など出すことができません。部下から意見が出ないならば、リーダーは自分自身を振り返り、自分を変える必要があるでしょう。

逆に「メンバーの意見交換が活発過ぎて、結論がまとまらない」という事態に陥る例もあります。この背景にあるものは、メンバーそれぞれの個人的価値観のぶつかり合いです。リーダーは、すべての意見を肯定的に受け止めつつ、それぞれの意見の問題点・課題を全体に投げかけてみるなど、チームの調整役に回るべきでしょう。

チームメンバーそれぞれの思いをリーダーが上手に引き出しつつ、全員が納得できる「理念」が完成したとき、そのチームは理想の介護サービスを提供できる強い組織へと成長します。

焦る必要はありません。リーダー自身がミーティングのプロセスの中で成長しながら、組織を少しずつ理想の姿へと導いていくイメージを持っていきましょう。

引用元:『おはよう21』中央法規出版,2018年5月